雑貨業界・小さな会社の海外チャレンジ:海外市場でのネーミング 事例

今回のブログでは、日本の雑貨メーカーがアメリカ市場へ展開チャレンジした際の、ネーミング変更に関わるエピソードを事例と共にご紹介します。

クライアントの目標:アメリカ市場での販売実績を確立

クライアントの商品は日本では百貨店含む数多くの販売店で販売されていました。商品クオリティには定評があり、アメリカ市場でも十分受け入れられるような商品ラインを沢山持っていました。クライアントからの依頼は、商品のアメリカ展開の第一歩として自社企画の商品をまず最初にある特定の販売店に投入したいというものでした。

特に、高品質な商品を取り扱い、カスタマーサービスにも定評のあるアメリカの某百貨店で商品展開を開始することで、アメリカ市場でのブランド認知度を高め、アメリカでの販売を拡大したい、という強い要望がありました。

商談に至るまでのエピソード:粘り強く

アメリカ市場で有名な某百貨店との商談に至るまでの道のりは、決して容易なものではありませんでした。毎日何十社という企業からの売り込みがある販売店ですから当然です。公式サイトのコンタクトフォームから連絡しても、決裁者と繋がり商談に持ち込むのは至難の業です。そこでまずは本店の売り場に何度か足を運び売り場の店員さんとも仲良くなり、会話を通じて担当カテゴリーの本部バイヤーの連絡先情報を獲得しました。その後、入手した担当バイヤーの連絡先へ繰り返し電話をしましたがいつも留守番電話に繋がり、折り返しの連絡も一切ありませんでした。それでも諦めず、「まずは商品だけでもご覧いただきたい」「一度商談の機会をいただけませんか」と根気強くメッセージを残し続けました。そうした努力が実り、ようやく担当バイヤーと直接電話で話す機会を得てついに商談を設定することができたのです。

クライアントが持つ課題1:様々な商品ラインを持っていることによる混乱

ようやく展開をしたい販売店バイヤーとの商談の設定までこぎつけましたが、クライアントの商品をアメリカに展開するにはある課題を感じていました。それはブランドとして売り込む際の統一感がなかったことです。クライアントは様々な商品ラインを販売しているため、日本ではコレクションごとに異なるブランド名で展開されており、もともとそれぞれが使用されているパッケージや資材のスタイルも異なっていました。

せっかくこぎつけた商談ですから、様々な商品ラインを紹介し、その中のどれかでも採用されればよいと考えるのは理解できます。しかしながら、ブランドとして完成された商品として展開したい場合、商談の場であれもこれもと様々な種類の商品を提案してしまうのは、結果としてバイヤーを混乱させてしまうという問題がありました。

解決策:提案する商品のタイプを厳選

もともと商談前に何度も直接本店の売り場の下見を行っていたことで、どのような商品が既に展開されているかは確認できていました。商談の際、販売店にとってこれまで販売してこなかったタイプの商品ラインに絞り込んで提案することにしました。既にアメリカ市場で認知のあるブランドとクオリティもデザインも似たような商品ラインの商材を提案しても勝ち目がないからです。仮に商談が成立し、商品展開が実現した場合、この絞り込んだタイプの商品を永続的に提供し続けていくということが前提です。

商談の際、担当バイヤーには提案する商品ラインを販売店にとってこれまで販売してこなかった商品タイプに絞り込んで紹介し、ブランド名を統一する戦略を説明し、商品のパッケージや資材は販売店の売り場に合わせてフレキシブルに対応するということを伝えました。商品のデザインや品質についても十分に理解と評価をいただき、その結果、無事に商談は成功し、商品の投入が決定しました。

クライアントが持つ課題2:ロゴが販売店のPB商品と類似

次に、投入が決まったことでクライアントはアメリカで展開するにあたり、これまで日本で使用していたイニシャルをモチーフとしたロゴが真ん中に大きく入っているデザインを用意していました。しかし、クライアントが用意したイニシャルのロゴデザインが、商品を投入することになるアメリカの某販売店のプライベートブランド商品に使われているロゴと似ている消費者に誤解を生むという指摘がありました。結果的にクライアントが用意したパッケージデザインは使用されないことになり、パッケージデザインの再検討を余儀なくされました。

解決策:ブランド名を会社名に統一

そこで、アメリカ市場で展開するにあたり、日本で使用していた既存のブランド名は使用せず、これまで日本でも使用していなかった会社名を新たにブランド名として統一することをクライアントに提案しました。これは、各カテゴリーごとに異なっていたブランド名も全て会社名のブランド名の元統一して販売する形です。アメリカ市場では会社名とブランド名が統一されている方が、販売店販売店や消費者にとって圧倒的にシンプルで認知しやすいためです。

新しくアメリカ展開用に作成したラベルでは会社名を英語表記で表現、それをロゴとして使用することになりました。そのほうが断然シンプルでかつブランド名を覚えてもらいやすいのです。「販売店のプライベートブランドのロゴと類似しているため混乱を招く」との指摘がむしろ良い結果につながった例といえるでしょう。

こうして、アメリカ市場では新たに会社名をブランド名として統一した商品ラインが展開されることとなりました。

その後、クライアントは日本国内で異なるブランド名を使用していた複数の商品ラインを、自社の英語表記の会社名に統一し、海外展開用に統一されたブランドとして打ち出すようになりました。これにより、海外のバイヤーにとってもブランド名が覚えやすくなり、仕入れの際の利便性も向上したと考えられます。

では、ここから海外展開のネーミングに関しておさらいをしましょう。

前回のブログでも書きましたが、日本ではコレクションごとに異なるブランド名を採用しているケースがよく見られます。日本市場ではこれで問題ないかもしれません。同じ会社の商品で異なるブランドが多々存在する場合、アメリカ市場のバイヤーにとっては非常に分かりにくく、ブランドの認知や販売促進の妨げになる可能性があります。

同じ会社の製品で、商品のタイプによって異なるブランド名をつけるより、ブランド名は一つのもと、種類はコレクションとして分けるほうがアメリカ市場では得策です。販売店のバイヤーに訴求効果が高まるだけでなく、商品が展開された後、消費者にもブランド名を覚えてもらいやすくなり認知度アップに繋がります。

そして、アメリカ市場では一般的に会社名とブランド名を統一するほうがシンプルで認知されやすいため、会社名をブランド名として統一することが有効な戦略です。しかし、顧客や市場の要望によりブランド名や商品名の変更を求められた場合、どの程度ネーミングに柔軟に対応できるかも重要なポイントです。

また、バイヤーは商品そのもののクオリティに加え、パッケージやラベルの読みやすさ、統一感があるか、販売店の顧客に訴求できるか、販売しやすいかなどを総合的に評価し商品を選定します。たとえ商品が良質であっても、ブランドイメージやパッケージの統一性がなければ、採用が難しくなることもあります。

多くの日本の中小雑貨事業者は、国内と同じブランド名、商品のネーミングやパッケージのままでの海外展開を希望されます。その理由として、まずネーミングを変更するにはパッケージを全面的に作り直す必要があり、コストがかかるからです。そのため、万が一売れなかった場合のリスクを考慮すると、既存のブランド名を維持するほうが現実的な選択となっているのです。とはいえ、マーケットによって柔軟な対応が求められることもあり、展開時には注意が必要です。

海外市場に展開する際、日本国内で使用しているブランド名やロゴデザインが既にその市場で存在していたり、他社ブランドと類似していたり、あるいは現地販売店が展開するプライベートブランドのロゴと競合してしまうケースがあります。こうしたバッティングを避けるためにも、事前にターゲット市場での商標やデザイン調査を十分に行い、慎重にアプローチすることをお勧めします。

一般的な名称として広く使われている普通名詞や一般的な言葉を使ったネーミングは注意と工夫が必要です。たとえば、

  • 商品のジャンルそのものを指す名前を使う(例:Soap、Towel、Candleなど)
  • 日常生活でよく使われる一般的な言葉を使う(例:Pure、Cute、Coolなど)
  • 単語を組み合わせただけで特定性が薄い名前を使う(例:Happy Life、Easy Living、Natural Lifeなど)

これらの言葉を組み合わせてブランド名としているブランドは多くみられます。しかし似た名称がすでに存在している可能性が高く、ロゴやブランド名が他社と競合したり、商標登録が難しくなることもあります。消費者にとっても区別がつきにくくなります。

また、複数の単語を組み合わせて作る造語のブランド名もよく見られますが、アメリカ市場では発音や意味が分かりにくいネーミングは敬遠されます。また、会社や商品のコンセプト、商品特性と関係のないネーミングも、説得力に欠けるため避けるべきです。消費者にとっても分かりにくいため特に予算が限られている中小企業の場合、消費者やバイヤーにとって分かりにくい名前はブランドの浸透を妨げるため、避ける方が無難です。

では、ここでこれまで述べた事例のまとめです。

  1. アメリカ市場では、特にブランドの統一感が重要視されます。そのため、商談の際に複数の異なるブランド名が使用されている商品サンプルを提示すると、販売店バイヤーは混乱します。商談を成功させるためには、提示するサンプルのブランド名を統一することが非常に重要です。
  2. たとえ同じブランド名であっても、タイプや用途が異なる複数の商品ラインを一度にバイヤーへ紹介すると、かえって混乱を招く恐れがあります。バイヤーがブランドのイメージや特徴を明確に理解できるように、商品のタイプを明確に絞り、統一感を持って提案することが大切です。
  3. アメリカの販売店バイヤーは陳列時の見た目の統一感やパッケージの印象も考えながら商品を吟味します。パッケージや使用する資材も一貫したブランドイメージを提示することは、バイヤーを混乱させることなく印象付けるためにもとても重要なポイントです。
  4. 日本で使用しているブランド名が、アメリカのターゲット市場において既存在したり類似したりする場合もあります。そのため、ブランド名やロゴ、パッケージの変更にどれくらい柔軟に対応できるかをあらかじめ検討しておくことも大切です。
  5. アメリカ展開用にブランド名を変更する場合、発音しやすく極力シンプルなネーミングを心がけてください。複数の単語を組み合わせて作られる造語のネーミングでは、発音しずらくネーミングの意図が伝わりにくいものも、マーケティング予算が限られる中小雑貨事業者にとってはブランドが浸透しにくいので避けましょう。
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