雑貨業界小さな企業の海外チャレンジアメリカ市場へ 展開商品選びでよくある誤解

中小の雑貨事業者が海外展開を検討する際、どの市場に展開するかについては、先に述べた主に5つの理由からアメリカ市場への展開をお勧めすることを説明しました。

そこで、アメリカ市場に商品を展開しようと決意する事業者の多くは、アメリカ市場での商品販売は、日本国内で販売するのとは異なることはなんとなくは分かっていますが、たいていの場合は自社のどの商品をアメリカで展開したいかをざっくりとでも決めています。

自社の商品の中で今一番売れている商品や、長年人気の商品、雑誌などで取り上げられた商品、新商品であるか、アメリカ人が好みそうか、日本に来ている外国人によく売れているなどを考慮して選ばれることが多いです。

product review

しかしながら、事業者が考えるアメリカで売れると思う商品と、実際にアメリカの市場で売れる商品との間にはズレが生じていることがあります。

今回は、売れると思ってアメリカ市場で販売を開始した商品が結果的にあまり売れなかったというケースなどを交え、日本の雑貨商品をアメリカ市場で販路拡大し、マーケティング、営業、販売促進を行ってきた経験をもとに、まずは、中小の日本の雑貨業界に携わる人々が、自社商品をアメリカ市場に展開しようとする際に誤解してしまいやすい5つのポイントや注意点をお伝えします。

なお、これらのポイントは、実際の販売経験に基づいた雑貨業界に限った見解のため、経験のない分野や商品カテゴリー、例えばアメリカでも人気のアニメ関連雑貨、化粧品類、パーソナルケア商品、食品などの分野はここでは触れません。これまでの経験や実績がある服飾雑貨やインテリア小物などのカテゴリーについて詳しく見ていきます。

  1. 日本に旅行に来たアメリカ人がお土産に購入する商品が売れる
  2. 日本で販売している商品をそのまま販売しても売れる
  3. 自社で一番売れている商品が売れる
  4. 日本語表記があるほうが売れる
  5. 日本文化を強調したようなデザインのほうが売れる
目次

誤解1 日本に旅行に来たアメリカ人がお土産に購入する商品がアメリカでも売れる

今回のBlogでは、まず

  1. 日本に旅行に来たアメリカ人がお土産に購入する商品がアメリカでも売れる

の誤解について見ていきます。

円安の加速で、海外からの旅行者が増え、空前のインバウンドブームに沸いている日本。コロナ前からオンラインショップの台頭で業績が伸び悩んでいた百貨店も、外国人旅行者の購買力のおかげで過去最高益を出す企業も出てきています。都心部の百貨店に限らず、観光地のお土産屋などの雑貨店でも、外国人観光客のおかげで売り上げをかなり延ばしてきている販売店も多く見られます。

雑貨業界の事業者も、インバウンドの外国人観光客に受けそうなデザインの雑貨商品を製造、販売するなど、インバウンドブームに乗ろうと各社が外国人観光客の購買を目指しています。確かに、日本に観光目的で来た外国人は日本の雑貨を家族や友人、知人、そして自分自身への思い出としてたくさんお土産として購入していきます。

では、ここからアメリカから日本に旅行に来る旅行者に焦点を当ててみましょう。

2024年の現在の統計では、日本へのアメリカからの旅行者は韓国、台湾に次ぐ世界で3番目の数になっています。世界で3番目のアメリカからの旅行者の数ですが、以前からアメリカ人が旅行する際に、アジア人の観光客と比較しても、旅先でのお金の使い方は商品を購入するモノ消費ではなく、体験型のコト消費であることは知られていました。

インバウンド体験型コト消費

実際、私の夫はアメリカ人ですが、夫が初めて母親を日本に連れて行った際に、食事や体験にはお金を使いましたが、観光地に行ってもお土産売り場でも、帰りの空港でも、ほとんどお金を使いませんでした。

なぜ日本に来たのにお土産を買わないのかを聞いたところ、それらをアメリカに持ち帰っても、生活の中でどう利用するかもわからない、家のインテリアなどのテイストとも違う、親戚などへお土産を買って渡しても、使ってもらえるかわからないから、など様々な理由があるようで、モノにお金を使うのであれば、日本でなければできないことを体験して帰りたいということでした。

現在もアメリカからの旅行者は、体験を重視する傾向がありますが、今は空前の円安ですし、また、日本の雑貨事業者も、こぞってインバウンドブームに乗って主に外国人観光客をターゲットにした商品を製造しています。アメリカからの旅行者にとって、34年ぶりの円安や、日本文化に対する好感度がさらに上がっていることもあり、以前にもまして日本に旅行に行った際には、日本の商品を買って帰りたいと思うようになっています。

今年、2度ほど日本に帰国していますが、多くの欧米からの外国人観光客が日本の販売店で様々な日本の雑貨を購入しているのを見ました。欧米人というだけで、彼らがアメリカ人であるかどうかまでは分かりませんでしたが、今は空前の円安ですから、彼らにとっては日本の品質のよい雑貨小物が手ごろな価格で購入できて、お土産としては最適なのでしょう。

日本の和傘

日本の雑貨事業者が勘違いしやすいのは、外国人観光客に売れているからといって、外国市場でも同じように売れると思い込んでしまうことです。特に、日本に旅行に来た欧米人が購入したからといって、その商品がアメリカ市場でも売れると勘違いしてしまうことがあります。

日本を訪れる際に出会う商品は、日本の文化に触れ、訪れた店の雰囲気や品揃えや陳列、接客、日本のライフスタイルの中でその商品がどう使われているかなど、様々な興味を引く要素があります。お店で見た商品がアメリカにはないから珍しい、可愛い、面白い、使ってみたい、お土産に購入したいという意識が高まります。特に最近は、ソーシャルメディア(SNS)の影響や日本に旅行した知人からの情報などで、日本に行ったら絶対に購入したいと決めている商品も多いようです。

しかしながら、日本で見たような商品が、自国の販売店で売られていた場合、その商品が果たして日本で見たときと同じく魅力的に見えるのかどうか、また日本でお土産として購入した時のように、購入したいと思うかどうか、ということです。もちろん、日本で旅行中に購入した雑貨商品が気に入り、自国に戻っても同じ商品、もしくは似たような商品を探して購入することもありますが、そうしたケースは多くありません。旅行先でお土産としては購入するけれども、自国に戻ってまでその商品を購入したいとは思わない、というのが一般的です。

日本のお土産売り場や雑貨店、ホテルの販売店でよく見かける、外国人観光客向けの日本の雑貨小物がアメリカでも売れるか、という問い合わせはよくあります。実際、アメリカのライフスタイル雑貨やギフトショップでヒアリングを行った経験もありますが、多くの販売店からは、そのような商品は日本に旅行した際にお土産として日本で購入するから価値があるのであって、アメリカの販売店に置いても顧客は買わないとの意見が寄せられました。もしくは日本の商品を多く取り扱う雑貨店や専門店のような場所では売れる可能性がありますが、そのような販売店はアメリカにはごく少数しかありませんし、また、アメリカで販売される商品の価格は、日本で購入した時と比較して倍近くになることもあります。

Misunderstood

アメリカからの旅行者が日本に訪れて文化に触れ、魅力的に感じて購入した商品は、アメリカに戻ってからどのように使用されるのか、また、アメリカ人がお土産として購入する商品やそれに類似した商品をアメリカでも探して購入するかどうか、を考えると、日本を訪れる外国人観光客が購入する商品がアメリカ国内でも同様に売れるとは限らないということです。

次回は、

 2)日本で販売している商品をそのまま販売しても売れる

の誤解について見ていきます。

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