雑貨業界小さな企業の海外チャレンジアメリカ市場へ:展開商品選びでよくある誤解 3
- 日本に旅行に来たアメリカ人がお土産に購入する商品が売れる
- 日本で販売している商品をそのまま販売しても売れる
- 自社で一番売れている商品が売れる
- 日本語表記があるほうが売れる
- 日本文化を強調したようなデザインのほうが売れる
前回のブログでは、3.「自社で一番売れている商品が売れる」という誤解について、日本とアメリカの生活習慣や嗜好の違いにより、日本で売れてもアメリカでそれほど売れない商品があることを述べましたが、もう少し見ていこうと思います。
日本では、昔から特に女性は色白であることを好む傾向があります。肌を焼かないためのグッズは年中売られていて、特に春先から夏にかけて店頭ではUVカット関連商品で溢れています。日本人は、肌を紫外線から守るために、主にシミをつくらない目的でUVカット商品を利用します。日本で販売されているUVカット関連商品の宣伝や広告を見ても、それは明らかです。
そこで、夏に日本の雑貨店の店頭でもよく見かけるのがアームカバーです。冬の寒さ対策としてのアームウォーマーは理解しやすいですが、夏の季節に多種多様なアームカバーが店頭に並んでおり、薄着になる夏場に半袖を着ても肌を焼かないために使用されたり、車を運転している際に片方の手だけが焼けてしまうことを防ぐために使われたりします。ジョギングなどのスポーツや、キャンプなどのアウトドアアクティビティにも便利なアームカバーが沢山販売されています。デザインも長さも様々で、高温多湿の日本の夏に適したクール素材のものもあり、夏はアームカバーの需要が高く、多くの事業者が販売に力を入れています。冬のアームウオーマーと、腕を布で包むという使用方法は同じでも、夏の場合はアームカバーと呼ぶようですね。夏場に、特に多くの女性が利用しているアームカバーですが、利用目的はもちろん日焼け対策、腕を焼きたくないという理由でした。
日本でそれだけ売れるのであれば、アメリカ市場でもニーズがあって売れるのではないかと考えるのは普通です。しかし、アメリカでは夏に日焼け防止 (焼きたくないから) の理由でアームカバーをしている人をほとんど見かけません。アメリカ人は、夏に肌を隠すファッションをしないのが一般的で、老若男女問わず、夏には思いっきり肌を見せて外出しています。
では、アメリカ人が紫外線を気にしていないのかというと、日本人とは異なり、紫外線について気にする理由が異なります。アメリカ人が紫外線を気にするのは、肌の炎症やスキンキャンサー(皮膚がん)への恐れが主な理由であり、日本人のように日焼けによるシミやそばかすなどの美容的な理由で紫外線を避ける人が少ないです。特に白人の多くは、逆に肌が白いことがコンプレックスな方も多く、夏に肌を焼きたがります。ちなみに私自信も年頃の娘がおりますが、彼女含め友達も皆、肌を小麦色に焼いて健康に見せたいという願望があります。そのため、アメリカ人の多くは、日焼けで肌が赤くなって炎症を起こさないように、スキンキャンサーを防ぐために、SPF(Sun Protection Factor)が高いSPF 50+などのサンスクリーンを塗っていますが、日本語では日焼け止めクリームとして、宣伝広告も紫外線から肌を守り、肌を焼かない、肌の色をより白く保つためのクリームとして販売されています。
アメリカは国土が広く、例えば、北西部のシアトルのように夏が涼しい地域や、東海岸の日本の夏のように高温多湿な地域、ハワイのように年中夏のような気候の地域もありますが、曇っていても紫外線は非常に強いため、アメリカ人は子供のころから紫外線とスキンキャンサーとの関連について教育されており、朝、子供にサンスクリーンを塗って学校に登校させる親も多いです。
サンスクリーンを塗った後、効果がどのくらい持続するかについては議論がありますが、これまで述べたように、アメリカ人はスキンキャンサーを防止するためにサンスクリーンを肌に付けますが、日焼けやシミの予防目的でアームカバーを着用することはほとんどありません。
一方、アームカバーはサンスクリーンを肌に塗る必要がないため、必要に応じて直ぐに着脱ができることや、クリームを塗って肌が荒れてしまうような敏感肌の人にも最適ではありますが、アメリカでは夏は思いっきり好きな洋服で外出するというライフスタイルが一般的ですので、夏に肌を隠すように覆っているファッションには、理由が理解できず異様に見られることもありますので、アームカバーという商品も、アメリカのライフスタイルやファッションの嗜好に合ったデザインものや、肌が弱い人の市場などにおいては、商品の可能性があるのかもしれません。
いずれにしても、アメリカで新たな夏の必需品としてアームカバーという分野を開くためには、啓蒙活動やマーケティング努力が必要です。多くのアメリカ人がアームカバーを使用するようになったら、それも面白い光景だと思います。
今度は、少し別な角度で見ていきます。
一番売れたものほど、既に市場に入っていることがある
会社の中では稼ぎ頭の商品や代表的な商品が、なぜかアメリカ市場ではあまり売れないことがあります。それは類似品が出やすいからです。よく売れている雑貨商品ほど、似たような商品が多く存在し、すぐに類似品が出てきます。現在はインターネットで世界中の商品情報が簡単に入手できるため、特許を取得していない商品は、日本で売れている雑貨商品が特にアジア諸国で直ぐに類似品が出回り、一足先に類似品がアメリカに入っていることもあります。
アメリカ国内のライフスタイルショップでも、「あれ、この商品は日本のブランドかな?」と思ってよく見てみると、日本の商品ではないことがあります。あたかも日本製品のような商品がアメリカの雑貨店で売られていることもあります。たいていの場合、アジア圏の国から入っている商品だったり、時にはアメリカのブランドだったりもします。日本の商品という表現は少し誤解を生じやすいので、ここでは、日本製(Made in Japan)と日本国内の会社が製造販売しているけど日本製ではない商品(例:Made in Chinaなど)の両方を日本の商品として見ていきます。
ある商品が日本国内でニュースになったり、SNSなどで取り上げられたり、インフルエンサーによって人気になったりした商品を、いざアメリカに展開しようとすると、既に同じようなものが入っていることが多くなっています。人気になればなるほど、似たような商材が市場に溢れます。もちろん、アメリカで展開したい商品がアメリカ市場では後発であっても、商品力やマーケティング力、価格競争力、営業力などで市場に浸透していくこともあります。したがって、既に類似品が入っているからといって諦める必要はありません。
また、アメリカは国土が広く、中小企業にとって雑貨商品をアメリカ全土に一度に浸透させることは至難の業です。先発の類似品がある地域で販売され始めても、他の地域では販売されていないことも多々あります。そのため、チャンスが全くないわけではありません。ただし、今の時代、販売店も消費者も興味がある商品の情報は直ぐにキャッチできますから、先にアメリカ市場に展開するほうが、まだ競合が少ない段階で優位性が高くなります。
事業者にとっては一番売れている商品でも、類似品が多い商品の場合はアメリカ市場のバイヤーにとっては今更ピンとこない商品になることもあるため、逆に、事業者にとっては日本市場ではそれほど稼ぎ頭になっていない、会社にとっては少しマイナーなポジションの商品がアメリカでは売れることも有ります。そこまで売れていないということは、アメリカ市場でも知られにくいため、まだ市場で知られていない、新しい、珍しいものを探している販売店や消費者にとっては、魅力的な商品となり、売れる商品に化けることもあります。
よく、日本の事業者がアメリカの雑貨系の展示会に出展する際、その会社で一番売れているヒット商品や自慢の商品をメインに展示しています。もちろん、そういった商品が海外でも売れる確率が高いと考えるのは正しいです。しかし、一番売れている商品というのは、既にアメリカの展示会で類似品を見ていたりして、特に新鮮味がなく魅力的に思われないこともあります。
アメリカの展示会に出展するのに、せっかく高い出展料や渡航費を払って、日本で売れた人気商品で臨んだ展示会で反応が悪かった場合、多くの日本の事業者は「アメリカ人の反応を見たかった」として出展したことを成果として帰ることが多いです。現実には、アメリカの展示会に市場調査目的で出展しても、その後のバイヤーの反応調査がそれほど意味をなさないことも多いです。アメリカの雑貨系展示会に臨む際の心得については、別のブログで詳しく見ていきます。
これまで日本の雑貨商品をアメリカで展開してみて、日本で売れている人気商品ではなく、マイナー商品のほうが逆にアメリカ市場で売れたことも多々ありますから、日本市場で売れたという基準でアメリカでも売れると判断をせず、アメリカ市場の生活習慣やライフスタイル、嗜好を把握し、そして類似品の状況を把握してアメリカ展開での商品選びをされることをお勧めします。
次回は、日本語表記があるほうが売れる、という誤解について見ていきます。