- 日本に旅行に来たアメリカ人がお土産に購入する商品が売れる
- 日本で販売している商品をそのまま販売しても売れる
- 自社で一番売れている商品が売れる
- 日本語表記があるほうが売れる
- 日本文化を強調したようなデザインのほうが売れる
前回のブログでは、「日本に旅行に来たアメリカ人がお土産に購入する商品が売れる」という誤解について見てきました。今回は、この誤解に多少関連がありますが、文化やライフスタイルの違いからくる商品選びの誤解について見ていきたいと思います。
日本で販売している商品をそのまま販売しても売れるという誤解
この誤解は、日本市場で長年販売されている定番商品や人気の商品が、形、色、サイズ、パッケージなど、そのままでアメリカ市場でも売れると勘違いしてしまうことです。最近では、インバウンドで外国人観光客が購入していったから、という理由でさらにそう感じてしまう傾向が高まっていると思われます。
ここでは、特に日本と異なるアメリカの文化やライフスタイルの違いに焦点を当て、アメリカ市場で商品を販売する際に気を付けなければならない点を見ていきます。
前回のブログで述べましたが、観光目的で日本に来た外国人が旅のお土産に商品を購入する場合、旅行者はあまり深く考えずに商品を購入することが多いです。私たち自身も、例えば海外に旅行に行った際には、見るものすべてが新鮮で、立ち寄ったお店やその国の百貨店などでも衝動買いをすることがありますし、帰国後に使えないと分かっても、旅先で購入したからしょうがないと思うことがよくあります。
海外の旅行者も同様に、日本で販売しているものすべてが目新しく新鮮に見えてしまうため、旅行先で購入した商品が、アメリカに帰国後、アメリカの文化やファッション、サイズ、ライフスタイルに合わないかもしれないと思っても購入します。
しかしながら、商品をアメリカ市場で展開する場合には、消費者は旅行のお土産としてではなく、日常生活の中で使用する目的で商品を購入するということを理解しなければなりません。アメリカの文化、言語、ライフスタイル、サイズなどは日本市場とは全く異なるため、それを意識して商品を販売する必要があります。
では、ここで自身の体験談から、いくつかの例を挙げてみていきます。
1)サイズの問題
スポーツの世界では、日本人とアメリカ人とでは体格が違うから、とよく比較されます。日本人の体形やサイズは、大体ある程度の範囲に収まっています。そのため、日本人向けに作られた洋服などは、サイズ展開をそれほど広げる必要がありません。しかし、アメリカ市場では様々な人種や体形の人々が住んでいるため、小さい人から大きい人まで、幅広いサイズ展開が必要です。
もちろん、販売する際にサイズ展開を絞ることはできます。しかしながら、日本のサイズ表記をそのままアメリカのサイズに当てはめることはできません。基本的にアメリカのサイズは日本のサイズよりもワンサイズ大きくなります。たとえば、日本のMサイズはアメリカではSサイズに相当します。
そのため、日本ではMサイズで販売されている商品をアメリカ市場でそのままMサイズとして販売してしまうと、アメリカ人にとってはSサイズとなり、小さいと感じられてしまいます。表記には注意が必要です。
また、日本のMサイズをアメリカで単にSサイズにすればよいのかというと、商品によっては一概に単純に変えればよいというわけでもありません。アメリカ人の平均身長や平均体重、骨格が日本人とは異なるため、Tシャツやスウェットなどのカジュアルな洋服であればそれほど問題にはならないかもしれませんが、着用した時のフィット感も異なってきます。そのため、日本人向けに作られた洋服をアメリカ市場でそのまま展開するのは、サイズ表記をアメリカ向けに変更しても、かなりハードルが高いのが実情です。
アメリカでは洋服のサイズ展開の幅広さと同様に、靴のサイズ展開も非常に幅広くなっています。また、靴はサイズが合わない場合の返品がかなり多いため、アメリカで靴を展開するのは特にハードルが高いと言われています。アメリカの靴屋に行くと、そのサイズ展開の多さに圧倒されます。日本とアメリカでは靴のサイズ表記も異なりますし、サイズ表記もアメリカ市場向けにローカライズしなければなりません。(オンラインなどでは日本のサイズ表記で販売できなくもないですが、より返品が起こりやすくなるでしょう。)
日本の靴ブランドでアメリカ市場に展開して成功しているブランドは、アメリカの幅広いサイズ展開に対応し、そして、別のブログで詳しく述べますが、日本の常識では考えられない返品文化を乗り越えたということで、心から尊敬の意を示します。
弊社では、サイズ展開がそれほど必要のないアパレル雑貨やアパレル小物を主に展開していますが、たとえば、日本の女性サイズの商品は小さいと言われることが多いです。日本の男性用のサイズの方が、よりアメリカの女性サイズにフィットすることもあります。ただし、日本の男性用サイズを女性向けに販売しようとすると、カラー展開が女性に合わなかったりと、簡単ではありません。
男性用サイズの商品は、女性もの以上にサイズが小さいと言われます。日本とアメリカでは、ファッションそのものや多くの人が好む洋服の着方が異なったりもしますので、日本のファッションブランドをアメリカ市場に展開する場合は、まずはアメリカに住むアジア人を対象にする場合が多いです。
また、サイズ展開のないワンサイズのアパレル雑貨や小物についても、日本人の華奢な体型に合わせて作られた商品は、標準的なアメリカ人の体型にはボリューム感に欠け、着用した際にしっくりこないこともよくあります。
このようにサイズ展開の課題はありますが、アメリカには多くの人種が住んでいます。アメリカに住む日本人と体型の似ているアジア人向けに商品を販売することはできます。ただし、そのマーケットはとても小さいです。商品をより多くのアメリカ人に届けたい場合は、アメリカの一般的な人の体型に合わせて商品やサイズをローカライズすべきでしょう。
サイズの問題は洋服などの身に着けるものだけに限りません。インテリア雑貨にも当てはまります。日本のシンプルなデザインに興味があるアメリカ人観光客が、日本に旅行に行った際に日本のインテリア雑貨を気に入って購入する光景はよく見かけます。しかしながら、アメリカに帰国し自宅に飾ろうとすると、家の広さや家具の大きさとのバランスが悪く、しっくりこないことがよくあります。もちろん、そういった日本サイズのインテリア雑貨をいくつも収集されている人もいらっしゃいますので、そういった方をターゲットに販売することは十分可能です。ただ、先にも述べましたように、そのマーケットは小さいです。
実際、私自身も日本に帰国した際に雑貨店でお洒落なインテリア雑貨を見つけ、シアトルに戻って自宅に飾ろうと試みましたが、合わないと感じたことがあります。壁の色や家具、全体的なインテリアとのバランスが悪く、結局飾らずに引き出しの中にしまうことになりました。
日本の住居や販売店で見るとお洒落に見えても、アメリカの住宅に日本のインテリア雑貨を飾ろうとすると合わないと感じ、結局倉庫にしまうか、誰かにあげるか、もしくはガレージセールで販売することになることはよくあります。
また、日本で見ると全くサイズに違和感がなかった日本のお洒落なインテリア雑貨をアメリカの消費者向けに販売を試みましたが、やはりアメリカの家の部屋サイズに合わないようで、残念ながら全くと言ってよいほど売れませんでした。外国人観光客に好評とか、メディアで取り上げられたりするような商品をそのままアメリカで展開しようとしても、アメリカの住宅事情をよく理解せずにアメリカ市場に販売に踏み切ると、思ったような販売結果にならないことはよくあります。
日本のシンプルなインテリア雑貨はアメリカでも浸透しつつあります。そのため、アメリカの住宅事情を調査し、サイズ感をアメリカの住宅にローカライズした商品のほうが、販売店でも取り扱いやすく、かつアメリカ人消費者も自宅に置いたときのイメージがつきやすく買いやすいでしょう。アメリカのライフスタイルを理解して商品をローカライズできれば、より多くのアメリカ人に商品の良さを理解して使ってもらえる確率が高くなります。
2)パッケージの問題
日本で販売している商品のほとんどは、日本の販売店で日本人を対象に販売することを考えてパッケージがデザインされています。日本人が見て分かりやすい、日本人に訴求しやすいように作られているのです。当然のことです。日本人はきめ細やかで美しいパッケージに惹かれて商品を購入することも多いです。もちろん、日本に旅行に来た外国人観光客は、日本のパッケージの綺麗さに驚いて、商品そのものの品質だけでなく、日本のパッケージがおしゃれで美しいと思って購入することがあります。実際に凝っていてお洒落な商品がたくさんあります。
では、アメリカで商品を展開する際に、日本で販売されているようなお洒落で綺麗なパッケージだからといって、アメリカの販売店が商品を置いてくれるのかというと、そうでもありません。前述の誤解の部分にも少し触れましたが、日本のお洒落で美しいパッケージの商品を、日本の雑貨専門店などで展開するのであれば、他の商品も日本の商品を日本の販売店で販売するように陳列されますから、そのままのパッケージで売るほうが良いでしょう。
しかしながら、一般のアメリカの販売店で商品を展開し、より多くのアメリカ人に商品を届けたいと考えるのであれば、アメリカの販売店が商品をどのように陳列し、消費者に販売しているかをよく理解してパッケージを考える必要があります。お店でどのような商品がどのように陳列されて販売されているのかによって、日本で販売するパッケージを改良するほうがよく売れるようになることもあります。
また、多くのアメリカ人はエコ志向が高く、オーバーパッケージングを嫌う人たちもいます。私もアメリカでの生活が長くなったせいか、日本の商品が素敵なパッケージに包まれていると、感動を覚えると同時に無駄なパッケージング(ゴミを必要以上に出している)と感じることがあります。例えば、お菓子などが1個1個プラスティックで個包装され、それらが個別の箱に入れられ、さらにそれを綺麗に並べて見せるお洒落なデザインの箱のパッケージに入れられ、高級感を漂わせている商品を見ると、プラスティックで包んだものをさらに個別の箱に入れる必要があるのだろうかと考えさせられました。パッケージに相当お金がかかっているのではとも思います。
数年前に日本に帰国した際に、義理の母や義理の妹夫婦に観光地で購入した日本のグミのお菓子をお土産に買って帰ったことがありました。一つ一つのグミがプラスチックに包まれ、それがきれいに並べられて箱に入っていて、カラフルでとてもお洒落に見えたので、日本のパッケージも合わせて楽しんでもらえるのではと思ったのです。しかし、そのお土産のグミのお菓子を渡し、いざ彼女たちが食べようと箱を開けたら、1個1個がプラスチックで個別包装されているのを見て、「これ1つのグミを食べるのに毎回プラスチックの袋を開けなきゃいけないの?プラスチックのゴミを大量生産しているみたい」と驚かれてしまいました。無駄なパッケージのし過ぎだと。
日本では、久しぶりに人と会うときや旅行に行った際には、必ず家族や友人、知人、同僚などにお土産を持参する習慣があります。お土産やギフトを選ぶ際に、商品の中身が良いものという前提はもちろんありますが、よりパッケージがお洒落なものを選ぶ傾向があると思います。私も日本のお菓子をお土産にもらったときに、外箱パッケージがあまりにお洒落だと、箱を取っておきたくなって、クリスマスカードを整理する入れ物にしたりしていました。
弊社では、北米のブランド企業の雑貨商品を日本市場に販売もしていますが、中の商品に問題がなくても、パッケージに少しでも傷があるものはほぼ返品されます。商品発送時にパッケージのダメージがなくても、店頭で消費者によってダメージが起こってしまうこともあります。店頭で起こった破損でも、差し替えを要求されることもあります。日本の販売店は、店頭に置く商品にパッケージのダメージがあるものは店頭から外し、消費者にはきれいなパッケージのものを届けたいという気持ちが高いのです。また、消費者側もパッケージに最高のクオリティを求め、綺麗なものしか購入しない傾向が高いため、当然のことなのです。
一方、アメリカでは、パッケージは捨てるものという意識が高いため、パッケージはシンプルなものが多いです。オーバーパッケージングはほとんど見られません。アメリカでは、雑貨店やブティックなどの販売店で、店頭に陳列されている商品に多少パッケージが破損していたり、パッケージの角が潰れたりしていても、消費者はそれほど問題視しません。販売店も、パッケージが破損しているからといって、メーカーに返品することもほとんどありません。その点、アメリカはパッケージにダメージがあった場合にメーカーに対して差し替えなどの無理な要求をしないですし、プラクティカルだと感じます。
パッケージで抑えておくべきこと
日本では、商品を購入されたお客様に対して、購入していただいた商品やパッケージにダメージがないように、丁寧に商品を袋に入れたりします。オンラインで販売した場合でも、配送中にパッケージに傷がつかないよう、箱の中に緩衝材を入れて商品を保護して梱包します。しかしながら、アメリカでは、たとえ百貨店でも、購入した商品を紙バッグに入れる際に店員が日本で購入した時のように丁寧に入れることはあまりありません。また、オンラインで購入した場合、発送を担当する方がその商品にダメージがないように念入りに梱包して発送するかどうかはわかりません。特に、アマゾンなどで販売すると、アマゾンの配送センターからどのように商品がピックされ、梱包され、商品が消費者のもとに届けられるのかは計り知れません。そのため、商品のパッケージが凝った形をしていたり、丈夫な形のパッケージではない場合、パッケージが綺麗なまま消費者のもとに届けられるかどうかはわかりません。
アメリカで商品を展開する際には、その商品をどのような場所で、どのように、どのような人に届けたいかによって、パッケージをローカライズする必要があります。
今回の「日本で販売している商品をそのまま販売しても売れる」という誤解については、主にサイズとパッケージに焦点を当ててみました。ここでは、パッケージに書かれている日本語を英語に翻訳するローカライゼーションについては触れていません。この商品説明やパッケージの英語化のローカライゼーションについては、また別途ブログでお伝えいたします。
次回は、「3. 自社で一番売れている商品が売れる」という誤解について見ていきます。